去る平成28年9月26日、老後の年金(老齢年金といいます)の受給資格期間を短縮する法律の一部を改正するための、閣議決定がされました。
これは、平成24年8月に決定されていた法律を変えるためのものです。
現在、老齢年金を受給するためには、25年の保険料納付期間(収入によって、学生さんの納付猶予や免除などもありますが、申請が認められたらのことになりますので、納付が前提です。受給資格を得るための期間です。)が必要です。
納付期間が足りないばっかりに、無年金となっておられる方の救済として、受給資格期間を10年としましょうという法律ができたのが平成24年の8月なのですが、法律ができたときの条件として、「消費税が10%になったら」実施しましょうということになっていました。
そもそもその時、平成27年の10月には10%になると法律で決められたにもかかわらず、政治家の都合で消費税の増税を先送りにしてしまいました。
先送りにする際、平成29年の4月には絶対に10%にしますと約束しました。にもかかわらず、結局また、延期となりました。
残念なことに、年金はいつも、政争の道具に使われてしまいます。
これでは、いつまでたっても受給資格期間の短縮は実現しません。
そこで、消費税増税をとうとう置き去りにしたままで、受給資格期間を短縮しようとする法案を閣議決定したのが、今回のいきさつです。
社会保障は消費増税でまかなう。だから、増税させてくださいという話はどうなってしまったのでしょうか?大方の人たちは、将来のことも考えて「仕方ない」と思われていたと思います。
結局後世にツケを回す(もしかしたら、このことによって、私たちより若い世代は年金の受給年齢が後ろに後ろにずれる可能性も出てきます。)か、放っておけば、どこかの国のように財政破綻してしまう可能性だってあるかもしれません。
考えると怖いことですね。そのようにならないことを願うばかりです。
まだ、閣議決定されただけなので臨時国会で正式に決定されるかはわかりませんが、このことをここで取り上げようと、ネットで情報を集めていたところ、非常に大きな勘違いをされている方がツィートなどをされているのを見て、年金の専門家として、これは放っておけないと思いました。
最大の勘違いは、「受給資格期間が満たされれば、満額の年金がもらえる」というものです。(おそらく多くの方が、老齢基礎年金の満額を考えていらっしゃると思いますので、ここでは、老齢基礎年金としてお伝えします。)
老齢基礎年金は、20歳から60歳まで支払いが義務とされている国民年金の保険料を40年間まるまる支払って満額(平成28年度では、780,100円)です。
ですので、現在の受給資格期間である25年分を払っただけでは、
780,100円÷40年×25年という計算となり、487,5563円(1円未満は四捨五入されます)しかもらえません。
ましてや、10年で受給資格期間が得られるようになったとしても、この計算式に当てはめると、195,025円しかないのです。
年金はこのように、保険料を払った分だけしかもらえないので、「今まで25年払った人がバカみたい」という考えは、全くの間違いということになります。
民間の保険を考えていただければお分かりかと思いますが、払わなければもらえません。「保険料」なのです。
これは、自助努力の考え方から成り立っています。
「勘違い」を理解していただけたとして、少し自分の老後を想像してみてください。
元気な方でも、60歳を超えたら体調が変わるとよく言われています。これは、年金事務所で相談対応をさせていただいていても、よく耳にする言葉です。
若いころにはわからないけれど、歳をとれば、だんだん働けなくなっくるのです。
老齢年金は、自分が受給できる年齢になってから自分が死ぬまで、ずっと出続けるもの。
ほんの数パーセントしかいないお金持ちの方ならいざ知らず、ほとんどの方が老齢年金を基盤として生活していらっしゃいます。
長寿社会になって、元気で長生きはとてもおめでたいことではありますが、生きている分だけお金はかかります。じゃあ、いくら貯金していたら足りるのでしょうか?
年金がそこそこあれば、3000万円くらいあればいいのではないか、という試算もありますが、今の世の中、生活に追われてなかなか貯蓄は難しいものです。
年金保険料を払うということは、長生きのリスクに備えるということに他なりません。
ついでに、もう一つの大きな勘違いについて触れておきます。
マスコミが、「若い人は年金がもらえなくなるので、払っても無駄」のようなことを言っていることがありますが、何でほんの一部しか伝えてくれないの?といつも思います。
年金の制度というのは、老後のためだけではないのです。
不幸にも障害になってしまったときや、家族を残して亡くなってしまったときにも、年金は生活の糧となりえます。
いずれも、保険料をちゃんと納付していないと、福祉の制度ではないので、該当しただけでは年金は出ません。
保険料を納付するということは、老後だけでなく、そんな将来のリスクにも備えられるということなのです。
もっとちゃんとした事実を、マスコミの皆様には伝えていただきたいものです。
お読みいただいた皆様、ぜひ、保険料を自分のために納付していきましょう。

作成日:2016/11/07
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