この制度、「労災保険の特別加入」といいます。
とは言っても、大企業の社長では、残念ながら加入はできません。
特別加入できるのは
@中小企業事業主等
A一人親方、特定作業従事者
B海外派遣の労働者
となっており、Bは社長等ではありませんが、日本から海外に派遣された労働者は、日本で働いてないので労災保険の対象にならないため、特別に労災保険に加入させて保護しようとするものです。
@の中小企業事業主等というのは、常時雇用している労働者が一定規模以下の法人の役員や個人事業主を指します。加入が認められるのは、労働者と同じように働いており、労働者に準じて保護するのが適当と認められる方たち。社長業だけしている方は、対象になりません。
なお、一定規模は、業種により決まっており、企業規模単位で以下の通りです。
※労働者を通年雇用しない場合であっても、1年間に100日以上労働者を使用している場合には、常時労働者を使用しているものとして取り扱われます。
業 種 |
労働者数 |
金 融 業 保 険 業 小 売 業 不 動 産 業 |
50人以下 |
卸 売 業 サービス業 |
100人以下 |
上記以外の業種 | 300人以下 |
Aの一人親方、というのは、労働者を雇用せずに次の事業を行う事業主をいいます。
● 旅客または貨物の運送の事業(個人タクシーや個人貨物運送などをされている方)
● 土木や建築関係の事業 (大工、左官、とび職人などをされている方)
● 水産の事業 (海苔の養殖や漁師などをされている方)
● 林業の事業 (樹木の伐採などをされている方)
● 医薬品の配置販売の事業 (置き薬の販売をされている方)
● リサイクル目的の廃棄物収集、解体などの事業(廃品回収などをされている方)
特定作業従事者というのは、特定農作業従事者や指定農業機械作業従事者など、危険な作業や有害物質を取り扱う方をいいます。
なお、労働者を使用する場合であっても、労働者を使用する日の合計が1年間に100日に満たないときには、 一人親方等として特別加入することができます。

特別加入が認められれば、労働者と同様の保険給付が受けられます。
保険料も、@の中小企業事業主等であれば、保険料率は通常の労災と同様の保険料率を使いますので、建設業など危険業務の方は労災保険料率も少しお高いですし、Aの一人親方でご加入の場合は、保険料率が中小事業主等より少し高くなっておりますが、民間の保険よりだんぜん手厚く、保険料もお安くなっています。

ほとんど同様の保険給付が受けられる特別加入ですが、少しだけ違いがあります。
まずは、給付基礎日額。給付基礎日額というのは、労災保険の給付を算定するための基礎となる額で、通常の 労働者は、原則として、平均賃金から算定されるのですが、特別加入者は、自分で給付基礎日額を決めて加入することになっています。上限は現在、中小企業事業主等で25,000円ですが、10,000円くらいに設定されている人が多いようです。
そして、休業(補償)給付。休業(補償)給付というのは、文字通り、労災(又は通災)で療養のために働けなくて休まざるを得ず、賃金が受けられない場合に支給されるのですが、事業主など、休んでもお給料が減額されないですよね。個人事業主の場合には、休んだら全く収入は得られないことも多いですが。
それじゃあ意味がないので、特別加入者の場合には「賃金が受けられない場合」という条件が入っていません。(ちなみに、健康保険の方では、事業主は休んだ時に「傷病手当金」は出ません。報酬が全く受けられない なら別ですが。)ただし、ボーナスを基礎として給付される特別支給金は、支給されないことになっています。
実は、他にも違いがあって、通勤災害に関しては、個人タクシーや個人貨物運送などをされている方とか、漁船の自営業者、特定農業従事者などのように、通勤なのか業務なのか判断ができない事業をされている方は最初から対象外とされています。

@の中小企業事業主等の場合、労災保険を成立させて、労働保険事務組合へ「労働保険事務」を委託する(=労働保険事務組合へ加入する)ことが必要です。
Aの一人親方の場合、一人親方の労働保険事務を扱う特別加入の団体へ「労働保険事務」を委託することが必要です。
特定作業従事者は、特定作業従事者の労働保険事務を扱う特別加入団体へ「労働保険事務」を委託すること が必要です。
Bの海外派遣者の場合は、海外派遣元の事業主か海外派遣団体が労災保険を成立させて手続きを行います。

当事務所で加入の労働保険事務組合では現在、@の中小企業事業主等とAの一人親方で建設の事業をされている方のみお取り扱いさせていただいております。
大変申し訳ございませんが、お取り扱いをさせていただいていないその他の事業主様は、各団体へお問い合わせくださいますようお願い致します。
該当の事業主様でご加入をご検討される方は、ぜひ、お問い合わせください。
他人事ではありません。夫も労災の被災者ですが、ここ数年中に知り合いの社長がお二人、仕事中に事故に遭われました。幸い命にかかわるものではありませんでしたが、入院を余儀なくされています。
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